1984年、若きアイルトン・セナがオックスフォードシャー州ウィットニーにあるトールマンのファクトリーに足を踏み入れる。格子の入った大きな窓から差し込む光に照らされ、新しいマシンが工房の手前に堂々と鎮座している。周りには、組み立てを終えたばかりのメカニックたち。当時のマシンらしく小さくコンパクトで、風変わりな形のリアウイングを持ち、あの頃のF1を一変させつつあった技術、攻撃的なターボエンジンを積んでいる。ウイングやノーズ、サイドポッドには、塗装だけが与えられる魅力をまとって、そのシーズンのスポンサーの大きなブランドが並ぶ。Candy、Segafredo、Magirus。白、青、赤。美しい。
これは、2024年11月29日に配信が始まり、数十か国でランキングを駆け上がり、非英語シリーズの世界ランキングで首位に立った人気Netflixシリーズ『セナ』のワンシーンだ。批判する人にも熱心なファンにも大いに話題を呼んだ作品である。プレーヤーの「一時停止」ボタンは、美しいと同時に重要な示唆に満ちた静止画を見せてくれる。その一つ目はこうだ。シリーズが描くマシンは40年以上前のものだが、それがこれらのブランドにもたらしている露出は今も生き生きとしており、数百万人の視聴者の目の前にある。
「今ここ」の露出と多次元的なスポンサーシップ
私たちはこれまで何度も、ビジビリティ、ブランドの露出、ブランド認知について書いてきた。どれも重要なテーマで、しばしばアクティベーションの世界と対比させ、いや、むしろ並べて論じてきた。まさにこの二つから、私たちの「アイスバーグ・スポンサーシップ」という考え方が生まれた。露出のいちばん外側、肉眼で見える部分は、実はブランドの露出から離れたところにありながらプロジェクトそのものの存続に欠かせない、はるかに大きなアクティベーションの世界に支えられている、という考え方だ(スポンサーが見返りに何を得るのかを論じた記事で詳しく書いた)。こうしたテーマは今も中心的だが、今日では相対化して捉える必要がある。露出について語るとき、私たちは「今ここ」の話をしており、ますます重要になりつつある側面、つまりスポンサーシップの多次元性を見落としている。
今こそ、スポンサーシップを時間という次元も持つツールとして捉え始めることが大切だ。もちろん今のシーズンがあり、今ここでレースを見ている観客がいる。だが、私たちのブランドが歴史的になる写真に写り込んだら、ファンのコレクションに加わるドキュメンタリーに、映画に、テレビシリーズに登場したら、何が起きるだろうか。さらに、ビデオゲームのグラフィックに入り込んだり、コレクター向けのモデルカーに描かれたりしたら。要するに、スポンサーが時間の壁を破り、スポンサー契約そのものを超えていくとき、何が起きるのか。
スポンサーシップにおけるプロペラ効果:価値を生みながら前へ進む
私たちは、スポーツやスポンサー対象の人気が、スポンサーシップの価値を本来の契約期間を超えて前へ押し出す動きを生むときに起こるダイナミクスを「プロペラ効果」と呼んでいる。この記事の冒頭で描いたアイルトン・セナのマシンに載ったSegafredoやCandyの例はまさにその好例だが、もちろん唯一の例ではない。
この「プロペラ効果」を特徴づける要素とは何か。
- スポーツと、スポンサー対象であるスポーツプロパティの長期にわたる人気
- スポーツプロパティが競技の内外で残した並外れた成果
- 現代的で強固なメディア・エコシステム
- スポンサーにとっての新たな価値の創出
人気と成果はプロペラの燃料であり、時間の流れの中でプロペラを回し続けるものだ。直感的にわかることだが、メディアのシステムが動き出すのに十分な未来の注目が生まれる理由は、まさにこの二つにある。
変わるメディア、変わるスポーツ、変わるスポンサーシップ
1984年にアイルトンがトールマンに乗り込んだとき、スポーツとスポーツマーケティングの風景はまったく違っていた。世界そのものがまったく違い、メディアの轟くような支配力はまだその途方もない響きのすべてを現していなかった。つまり、あのマシンがドキュメンタリーに、そしてシリーズに登場し、世界中を巡り、40年後もなお舞台の中心にいて伝説になるとは、誰も考えていなかった。
インターネット、ペイ・パー・ビュー、オンデマンドサービス、メディア市場のグローバル化、文化の統合の進行は、比較的最近の出来事だが、私たちの生活を前例のない形で一変させた。信じがたいことだが、力を増し続けるこの巨大なメディアの存在は、まだ誕生から30年あまりしか経っていない。この点は、F1とMotoGPのテレビ制作の仕組みを解説した記事でも取り上げた。
ドキュメンタリーシリーズ、ビデオゲーム、ポッドキャスト、専門チャンネルはスポーツを根本から変えた。何よりも、スポーツ体験の時間軸を引き延ばすことができたからだ。要するに、視聴者とスポーツコンテンツとの接点を長くし、スポーツという商品の体験そのものを、ひいてはブランドとの関係を劇的に変えた。メディアや文化的な作品がますます豊富になるほど、プロペラ効果は強まり、それに伴ってスポンサーが得る「新しい」価値も大きくなる。
「ロングテール」と「プロペラ効果」の違い
ここで強調しておきたいのは、この「プロペラ効果」がスポンサーシップの単なるロングテールとは異なるということだ。
ロングテールは、優れたスポンサーシップが私たちの認知と感情に与える好ましい作用による、心理的な効果である。マンチェスター・ユナイテッドのファンである私が「赤い悪魔」の黄金期を思い出すとき、たとえばユニフォームに輝いていたSHARPのロゴが頭に浮かぶ。同じように、バレンティーノ・ロッシやマックス・ビアッジの戦いを思い出すとき、浮かんでくるのはGauloisesやCamelのブランドだ。とはいえ、これらのスポンサーが消費者である私の中にそうした位置を占めていることを喜んでいるのは確かでも、この好ましい記憶がブランドにもたらす価値は、現実のものではあっても測ることはできない。
これに対してプロペラ効果は、きわめて実践的で具体的、そして測定可能だ。なぜなら、それは幅広く多様なオーディエンスに対するブランドの新たな露出であり、そのオーディエンスはスポンサーシップの好ましいプロセスをもう一度すべてたどることになるからだ。シリーズ『セナ』のマシンはレプリカにすぎないが、視聴者であり消費者である人々に与える効果は紛れもなく本物で、しかも非常に強力だ。だからこそ、マイケル・ジョーダン時代のシカゴ・ブルズを描いたESPNとNetflixによる2020年のドキュメンタリーシリーズ『ラストダンス』の公開後、StockXで最も取引の多いエア・ジョーダンの再販価格が2か月で約20%上昇したのも、1988年から1991年までマラドーナ時代のナポリのユニフォームに入っていたMarsのロゴが、30年以上たった今もレプリカや記念品の上で生き続けているのも、偶然ではない。
良いスポンサーシップは永遠に続く
この「プロペラ効果」は予測できるのか。部分的にはできる。ただし、前の章で見たように、並外れていることが欠かせない条件だ。
良いスポンサーシップはいずれにせよ永遠に続くとしても、最強のチームや選手をスポンサーし、優勝を待つだけでは足りない。勝利はいつだって助けになる。それは確かだ。だが、最も温かく熱狂的に語り継がれるのは、しばしばアンダードッグの物語、どん底からつかんだ大勝利の物語なのだ。否定しようがない。運、頭角を現しつつある才能を見抜く力、そして競技への理解は欠かせない要素だ。セナの話に戻れば、このブラジルの才能が史上最高のドライバーの一人になると予見できた人はいなかったかもしれない。だが、フォーミュラ・フォードの頃から彼の走りを追っていた人々は、自分たちがまったく並外れたものを目にしていると確信していた。
確かなのは、スポーツが拡大し続けるメディアの議題とコミュニケーションのエコシステムの中で主役級の役割を担う今日の世界では、こうしたことが起こる機会が増えているということだ。これは、F1でもほかの分野でも、スポンサー、エージェンシー、スポーツプロパティがもはや無視できないことであり、むしろ活かすべきことだ。
スポンサーシップにおけるプロペラ効果に関するよくある質問
スポンサーシップにおけるプロペラ効果とは何ですか?
プロペラ効果とは、スポーツや選手、チームの人気が、契約終了後もスポンサーシップの価値を前へ押し出し続けるダイナミクスのことです。ブランドがドキュメンタリー、映画、シリーズ、ビデオゲーム、コレクター向けのモデルカーなどに再び登場し、新しいオーディエンスの目に触れるときに生まれます。
プロペラ効果とスポンサーシップのロングテールの違いは何ですか?
ロングテールは、スポンサーがファンの記憶に残す好ましい印象で、現実の価値ではあっても測ることはできません。一方プロペラ効果は、メディア作品の中で再びロゴを目にする幅広いオーディエンスに対する、具体的で測定可能なブランドの新たな露出です。
プロペラ効果を生む要素は何ですか?
四つあります。スポーツとプロパティの長期にわたる人気、競技の内外での並外れた成果、現代的で強固なメディア・エコシステム、そしてスポンサーにとっての新たな価値の創出です。人気と成果がその燃料です。
トールマンのスポンサーとNetflixのセナのシリーズにはどんな関係がありますか?
2024年11月29日にNetflixで配信が始まったシリーズ『セナ』は、このブラジル人ドライバーが1984年に走らせたトールマンを、Candy、Segafredo、Magirusのロゴが入った当時のカラーリングで再現しています。2024年12月2日から8日の週には、Netflixで世界で最も視聴された非英語シリーズになりました。40年以上前にサーキットに登場したブランドが、再び数百万人の視聴者の前に戻ってきたのです。
プロペラ効果は予測できますか?
部分的にしかできません。並外れていることが必要です。成果、アンダードッグの物語、誰よりも早く見抜かれた才能。最強のチームをスポンサーするだけでは足りず、運と競技への理解も重要です。
セナ以外にもプロペラ効果の例はありますか?
あります。マイケル・ジョーダン時代のシカゴ・ブルズを描いたESPNとNetflixによる2020年のドキュメンタリーシリーズ『ラストダンス』の公開後、StockXで最も取引の多いエア・ジョーダンの再販価格は2か月で約20%上昇しました。また、1988年から1991年までマラドーナ時代のナポリのユニフォームに入っていたMarsのロゴは、今もレプリカや記念品に登場しています。