エクスペリエンシャル・マーケティング(体験型マーケティング)は、いまマーケティングの中でも特に注目され、活気のある分野の一つです。では、エクスペリエンシャル・マーケティングとは正確には何なのか。エクスペリエンシャル・マーケティング・エージェンシーは具体的に何をするのか。そして、グランプリやホスピタリティ、ファンゾーンを持つスポーツが、なぜこの種の戦略にとって最も豊かな舞台の一つなのでしょうか。
2026年9月更新。
要点:米国マーケティング協会(AMA)の定義によると、エクスペリエンシャル・マーケティングとは、消費者を直接巻き込み、ブランド体験への参加を促すアプローチであり、AMAはその例としてまさにスポンサーシップを挙げています。エクスペリエンシャル・マーケティング・エージェンシーは、イベント、地域でのアクティベーション、製品体験、ホスピタリティといった体験をオーダーメイドで設計します。スポーツの場では、すでに熱意を持ったオーディエンスが相手となるため、エクスペリエンシャル・マーケティングは特に効果を発揮します。
企業がエクスペリエンシャル・マーケティングを選ぶ理由
企業が顧客とコミュニケーションをとる手段は非常に多く、どれを選ぶかは戦略、ターゲット、予算、市場によって決まります。一方には、テレビ、新聞・雑誌、ラジオ、屋外広告、ウェブ、SNSといったマスメディアでの従来型広告があります。もう一方には、業界用語でBTL(ビロウ・ザ・ライン)と呼ばれる活動、つまりイベント、スポンサーシップ、ライセンシングやコブランディングのプログラム、特別なコラボレーション、プロモーションがあります。
私たちは毎日、膨大な量のメッセージを受け取っています。目覚めてすぐのSNSの通知、ニュース番組中のCM、朝食のシリアルの箱、車の中のラジオ、街の看板、タブレットで遊んでいるときの広告。これらのメッセージのうち、本当に記憶に残っているものはいくつあるでしょうか。
記憶に残ることはますます難しくなっている
一般的に、私たちが何かを覚えているのは2つの理由のどちらかです。そのときに必要としていたから、あるいは心を動かされたからです。
例を挙げましょう。エアフライヤーを買おうとしているとき、私は情報を集め、ブランドを比較し、レビューを読み、その期間はエアフライヤーの広告に一つ残らず目が留まります。購入してしまえば、関心は消えていきます。一方、あるエアフライヤーのブランドがアペリティフのパーティーに招待してくれて、シェフが最新モデルで一口料理を作り、その夜のゲストとしてスポーツのチャンピオンが自分の食生活について語ってくれたとします。楽しい夜で、話題にも引き込まれ、家でも作れそうな料理を味わえます。購入の機会が訪れたとき、私はそのブランドを思い出すでしょう。
ここでエクスペリエンシャル・マーケティング・エージェンシーの出番です。彼らの役割は、ほかにはないユニークなライブ体験を通じて消費者とブランドを直接結びつけ、感情的なつながりを生み出すことです。そのつながりがあるからこそ、顧客は購入の際、何の関係もない同等の製品よりもそのブランドを選ぶのです。
データもこの直感を裏づけています。Freemanが米国でHarris Pollと共同で実施した「Trust Report 2025」によると、対面イベントでブランドに触れた参加者の95%がそのブランドへの信頼を高め、85%がイベント後に購入意欲が高まったと回答しました。Event Marketerの調査「EventTrack 2026」でも、イベント参加後に購入に前向きになる消費者は61%にのぼります。
エクスペリエンシャル・マーケティング・エージェンシーが提供するもの
エクスペリエンシャル・マーケティング・エージェンシーの世界は非常に多様で、決まったフォーマットはありません。すべてのプロジェクトは、顧客の目標、ターゲット、予算に合わせてオーダーメイドで組み立てられます。代表的な活動には次のようなものがあります。
- 広場、駅、ショッピングセンター、店舗など人通りの多い場所でのプロモーションブース。製品を試したり、景品付きのゲームに参加したりできる
- ランニングシューズからドライビングシミュレーターまで、スタッフが案内する製品体験
- 音楽やエンターテインメント、ライブのスポーツアクティビティを取り入れた一般向けイベント
- 化粧品ブランドが新コレクションを発表する際の、有名メイクアップアーティストによるメイクセッションのようなパーソナライズされた体験
- リアルとデジタルを組み合わせたハイブリッド型の体験
コカ・コーラ、レッドブル、ハイネケン、ナイキ、アディダスといったブランドは、こうした活動をコミュニケーションの柱にしています。
スポーツが理想的な舞台である理由
スポーツは情熱そのものであり、何十億もの人々を巻き込みます。チームやライダー、ドライバー、大規模イベントに結びついた体験は、関心を集めるうえで大きなアドバンテージを持っています。最近の数字をいくつか紹介しましょう。
- FIFAによると、2022年のカタールW杯は50億人にリーチし、アルゼンチン対フランスの決勝は史上最多の14億2,000万人が視聴した
- フォーミュラ1は2025年、サーキット来場者数が過去最高の670万人に達し、世界のファンは8億2,700万人となった
- MotoGPは2025年のレースウイークエンドで360万人の観客を迎え、こちらも過去最高を記録した
こうしたイベントに結びついた体験型の施策は、もともと耳を傾ける準備ができているオーディエンスに届きます。このテーマは、スポーツにおけるエクスペリエンシャル・マーケティングやスポンサーシップの体験的側面についての記事でも詳しく取り上げています。
スポーツ・マーケティング・エージェンシーも体験を生み出せる
最もわかりやすい例は、大規模なスポーツイベントでのホスピタリティです。グランプリや決勝戦を専用エリアから観戦する体験は強く印象に残り、企業はそれをキャンペーンの賞品、インセンティブプログラム、顧客との関係づくりに活用しています。予算やゲストの人数に応じてさまざまなレベルがあり、たとえばMotoGPのVIPビレッジでは、40人以上のグループ向けに、企業ブランドで装飾できるプライベートスペースも用意されています。これはネットワーキングや新たな人脈づくりを目的としたものです。フォーミュラ1、サッカー、テニスのホスピタリティエリアも同様です。
体験はさらにパーソナルなものにもなり得ます。憧れのチャンピオンに会ってサインをもらったり一緒に写真を撮ったりすれば、ファンはその思い出を、それを贈ってくれた企業といつまでも結びつけて記憶します。私たちもこれまでに、ある企業の顧客向けに、スキーのチャンピオンがゲストと一緒にゲレンデで過ごす雪の週末や、有名テニス選手によるテニスクリニックを企画したことがあります。どちらのケースでも、ホスト役のブランドとの絆はこれ以上ないほど強いものになりました。
さらに、スポーツイベント期間中には一般の観客向けの企画もあり、スポンサーがゲームや製品体験、スターとの交流などでエリアを盛り上げます。
- 2025年11月の契約により、フォーミュラ1のファンゾーンは「presented by Heineken 0.0」となり、すべてのレースウイークエンドでライブ展示が予定されている
- ブレンボの名を冠したムジェロのイタリアGPでは、2025年のファンゾーンでライダーとの交流や、日曜日に観客がコースに入って表彰式を見届けられる企画が行われた
- 2026年のサッカーW杯では、FIFAファンフェスティバルが13都市で900万人以上を集め、商業パートナー向けに113のアクティベーションスペースが設けられた
2025年に過去最多の229,879人の観客を記録したトリノのNitto ATPファイナルズも、大規模なスポーツイベントがブランド体験の舞台として自然に機能することを示しています。
適切なエージェンシーの選び方
オーディエンスを積極的に巻き込みたいなら、自社が挑もうとしているフィールドをよく知るエージェンシーを選んでください。必ずしも最大手のエクスペリエンシャル・マーケティング・エージェンシーである必要はなく、自社の目標に最も合ったエージェンシーを選ぶことが大切です。体験がエンターテインメント・イベントから生まれるのであれば、エンターテインメント・マーケティング・エージェンシーとスポーツ・マーケティング・エージェンシーの違いや、イベント・マーケティング会社の仕事についての記事もぜひご覧ください。スポーツがフィールドなら、お気軽にご相談ください。
出典:米国マーケティング協会、experiential marketing、Freeman、Trust Report 2025、Trade Show Executive、Freeman Trust Reportのデータ、Event Marketer、EventTrack 2026、FIFA、カタール2022の視聴者数、フォーミュラ1公式、数字で見る2025年シーズン、MotoGP公式、2025年の総括、MotoGP、企業向けVIPビレッジ、フォーミュラ1公式、ハイネケンとのパートナーシップ、MotoGP公式、2025年ムジェロのファンゾーン、FIFA、2026年W杯のファンフェスティバル、ATP、トリノのNitto ATPファイナルズ。
エクスペリエンシャル・マーケティングに関するよくある質問
エクスペリエンシャル・マーケティングとは何ですか?
消費者を直接ブランド体験に巻き込み、メッセージを受け取るだけでなく参加するよう促すアプローチです。米国マーケティング協会はその定義の中で、例としてスポンサーシップを挙げています。
エクスペリエンシャル・マーケティング・エージェンシーは何をしますか?
ブランドのためにオーダーメイドの体験を企画・実施します。一般向けイベント、地域でのアクティベーション、製品体験、ホスピタリティ、ハイブリッド型の体験などを、顧客の目標、ターゲット、予算に合わせて組み立てます。
エクスペリエンシャル・マーケティングは本当に効果がありますか?
調査では効果が示されています。Freemanの「Trust Report 2025」によると、対面イベント後に参加者の95%がブランドへの信頼を高め、85%が購入意欲を高めました。「EventTrack 2026」でも、イベント後に購入に前向きになる消費者は61%です。
なぜスポーツはエクスペリエンシャル・マーケティングに適しているのですか?
すでに熱意を持った巨大なオーディエンスがいるからです。2025年、フォーミュラ1のサーキット来場者は670万人、MotoGPは360万人にのぼりました。大規模なスポーツイベントに結びついた体験は、関心と記憶の両面で有利なスタートを切れます。
スポーツスポンサーシップではどのような体験を提供できますか?
グランプリやイベントでのホスピタリティ、ライダーやドライバー、チャンピオンとの交流、有名アスリートとの週末やクリニック、ファンゾーンでの一般向けアクティベーション、スポンサーするチームやイベントに関連したキャンペーンやインセンティブプログラムなどです。