F1のスタートを見ながら、ブランドの数を数えてみてください。マシンについているものではなく、その周りにあるものです。ストレート沿いの看板、ウォールの文字、スタンドやコースをまたぐブリッジに書かれた名前。誰もきちんと読んではいないのに、誰もが目にしています。どの映像にも、レースの間ずっと。
これがサーキットの広告、いわゆるトラックサイド広告や周辺広告です。競技エリアを囲む看板のことで、サッカーからテニスまでほとんどのスポーツにありますが、モータースポーツには独自のルールがあります。F1やMotoGPでは、広告スペースを売るのはサーキットではなく、多くの場合、選手権の商業権を持つ組織です。そしてその看板の一部は、いまやテレビの中にしか存在しません。
サーキットの広告とは
周辺広告とは、競技エリアを縁取るすべての広告スペースを指します。スタジアムのピッチサイドの看板、テニスコートを囲むボード、サーキットのストレートやランオフエリア沿いの看板などです。長年のうちに、ペイントや横断幕から回転式ボードへ、さらに同じイベント中に何度もメッセージを切り替えられるLEDへと進化してきました。
その価値はシンプルです。画面に映っているということ。テレビでレースを見る人は看板を避けられません。カメラはコースを映し、コースはそれらのブランドに囲まれているからです。だから広告スペースの価格は、何よりも場所で決まります。カメラが長く映すコーナーは、一瞬しか映らない区間より価値があります。
F1とMotoGPで看板を売っているのは誰か
ここがモータースポーツとサッカーの違うところです。スタジアムでは、ピッチサイドの看板は通常クラブや試合の主催者が販売します。一方F1では、グランプリの看板の大部分を商業権者であるF1自身が管理し、グローバルパートナーの露出のために使っています。各レースのプロモーターは歴史的に主にチケット販売で収益を上げてきました。モナコ、ブラジル、シンガポール、オーストラリアなど一部のグランプリだけが、F1との特別な取り決めのもとで広告の一部を自ら扱ってきました。
MotoGPも似た仕組みです。1992年から選手権の商業権と放映権を持つMotoGP Sports Entertainment Group(旧ドルナ、2025年からリバティ・メディア傘下)は、トラックサイドの露出をパートナー向けパッケージに含めています。各グランプリの冠スポンサーは、自社の名前がついたレースのサーキットで露出を得ます。
実務上の意味は大きく、F1やMotoGPのグランプリに看板を出したい企業は、通常サーキットに電話をしません。選手権と、あるいはその仕組みを知るチームやエージェンシーと交渉します。詳しくはF1スポンサーシップとMotoGPスポンサーシップのページで解説しています。
看板からバーチャル広告へ
最も重要な変化のひとつは、スタンドからは見えません。F1はレースのテレビ中継の制作を自ら手がけており、バーチャル看板、つまりテレビの映像信号にだけ表示されサーキットには存在しないグラフィックを挿入できます。F1の商業パートナーシップを統括するジョニー・ハワースは2025年11月、これによってレース中にブランドを切り替えたり、市場ごとに異なる映像を送ったりできると説明しました。ブランドは自社が販売している国でだけ表示することもできます。
F1が、2025年末時点で11社あったグローバルパートナーに加え、ラテンアメリカでのマクドナルドのような地域パートナーシップを販売できるのも、ひとつにはこの仕組みのおかげです。世界中で露出する必要のない企業にとって、これまでなかった入り口になっています。
なぜ効果があり、どんなときに足りないのか
サーキットの広告には二つの強みがあります。一つ目は繰り返しです。週末を通して出ているブランドは、生中継にも、ハイライトにも、SNSで出回る写真にも、絶えず登場します。二つ目は連想です。コースの周りにあるものはレースの物語の一部になり、その格や興奮を少し分けてもらえます。
一方で、はっきりした限界もあります。看板が伝えるのは名前であって、物語ではありません。単独でも認知は高まりますが、人々のブランドの見方を変えたり、顧客を連れてきたりすることはまずありません。だからこそ、ホスピタリティやコンテンツ、観客向けの施策を組み合わせた、より大きなプロジェクトの一部として使うのが最も効果的です。私たちがスポンサーシップのアクティベーションと呼んでいるものです。
企業にとっての価値
周辺広告に一律の価格をつけることはできません。選手権、グランプリ、看板の位置、契約期間、そして付随する内容によって変わります。スペースだけを買うことはめったにないからです。F1では、看板へのアクセスはほぼ必ず選手権とのパートナーシップ契約を通じたもので、選手権はグローバルパートナーの独占性を慎重に守っています。
ですから、正しい問いは看板がいくらかではなく、何を達成したいのかです。特定の市場で知名度を上げたいなら、世界中で見られる実物の看板より、地域限定のバーチャル広告のほうが役立つかもしれません。顧客と会うことが目的なら、ウォールのロゴよりホスピタリティのほうが重要です。サーキットの広告は強力な手段ですが、あくまで手段です。
サーキットの広告に関するよくある質問
サーキットの広告とは何ですか?
レースのコースを囲む看板のことです。ストレート沿いのボード、ウォールやスタンド、ブリッジの文字などがあります。スポーツ全般では周辺広告やピッチサイド広告と呼ばれます。価値は、あらゆるテレビ映像に映ることにあります。
F1のサーキット広告は誰が販売していますか?
大部分は商業権者であるF1が扱い、自らのパートナーのために使っています。グランプリのプロモーターの収益は主にチケットで、看板の一部を特別な取り決めで自ら扱ってきたイベントはわずかです。
MotoGPではどうですか?
MotoGPの商業権と放映権は1992年から旧ドルナ、現在のMotoGP Sports Entertainment Groupが持っており、トラックサイドの露出をパートナー向けパッケージに含めています。各グランプリの冠スポンサーは、自社の名前がついたレースのサーキットで露出を得ます。
F1のバーチャル広告とは何ですか?
テレビの映像信号にデジタルで挿入され、サーキットには存在しない看板です。F1はレース中に切り替えたり、市場ごとに異なるブランドを表示したりでき、ラテンアメリカでのマクドナルドのような地域パートナーシップの販売を可能にしています。
周辺広告に効果はありますか?
繰り返しとイベントとの連想によって、認知を高める効果があります。ただし単独では伝えられることが少なく、ホスピタリティやコンテンツ、観客向けのアクティベーションを組み合わせたより大きなプロジェクトの一部として使うと最も効果を発揮します。
サーキットの看板はいくらですか?
一律の料金表はありません。価格は選手権、グランプリ、位置、契約期間、含まれるサービスによって決まります。F1やMotoGPでは、広告スペースはほぼ必ず選手権とのより大きなパートナーシップ契約の一部です。