インディカーでは、どのエンジンを積むかをチームが自分で選ぶことはありません。チームはシボレーかホンダからエンジンをリースしますが、どの1基が自分のマシンに載るかを決めるのはシリーズです。エンジンが必要になるたびに、メーカーが各イベントの前に指定するエンジンのプールから、すでに封印された1基を抽選で割り当てます。2026年のNTT INDYCAR SERIESのルールブックにそう定められており、このわずか数行に、アメリカのレース哲学の一端が込められています。差をつけるべきなのは、ドライバーとマシンをセッティングする人たちであって、抽選で当たった部品ではないのです。
このエンジンは、基本的には2012年から変わっていません。2.2リッターのターボV6で、2014年からは両メーカーともツインターボです(最初の2年間、ホンダはシングルターボを使っていました)。2013年以降、このシリーズにエンジンを供給しているのはこの2社だけで、それぞれが自社のバージョンを作っています。じっくり見る価値があるのは、このエンジンが今日のインディカーについて多くを語り、2028年にやって来るインディカーについてはさらに多くを語っているからです。
2.2リッターV6と12,000回転
ルールがメーカーに与える自由は、想像以上に小さいものです。排気量は2.2リッターに固定され、6つのシリンダーはV型に配置され、ボアは95ミリを超えてはならず、ストロークは自由です。燃料噴射は直噴で、ホンダのエンジンではポート噴射も併用しています。ターボチャージャーはボルグワーナー製の2基で、シリーズが義務づけるレブリミッターは12,000回転で作動します。重量にも下限があり、約112キロです。
一方、パワーを決めるのはコースです。ターボの過給圧は自由ではなく、シリーズがコースの種類ごとに定めます。インディアナポリスのようなスーパースピードウェイでは低く、ロードコースやストリートコースでは高く設定されます。そのため、ひとつの数字は存在しません。ロードコース仕様ではV6は約700馬力を発生し、高速オーバルではかなり低くなります。2023年からは、サトウキビの廃棄物から作る第2世代エタノールと他のバイオ燃料を混ぜた、完全に再生可能なシェルの燃料を使用しています。シリーズによれば、化石由来のガソリンと比べて温室効果ガスの排出を少なくとも60%削減します。インディカーは、100%再生可能な燃料でレースを行う最初の米国拠点のシリーズだとしています。
ハイブリッドと800馬力の壁
2024年7月7日、ミッドオハイオで行われたホンダ・インディ200で、インディカーは初めてのハイブリッドレースを行いました。シリーズ、シボレー、ホンダが共同で開発したこのシステムは、ハイブリッドという言葉から想像されるよりも小さなものです。48ボルトのモータージェネレーターユニットと、20個のスーパーキャパシタからなる蓄電システムで構成され、どちらもエンジンとギアボックスの間にあるベルハウジングの中に収められています。ブレーキング時にエネルギーを回収し、ドライバーがステアリングのボタンを押すと、約60馬力の上乗せとして放出します。
数秒間ターボの過給圧を上げることでさらに約60馬力を加えるプッシュ・トゥ・パス(Push to Pass)と合わせると、インディカーは800馬力を超えます。シリーズによれば、インディカーのマシンがこの壁を超えたのは約20年ぶりです。このボタンの仕組みや、レースで何秒使えるのかについては、プッシュ・トゥ・パスの記事で説明しました。ハイブリッドユニットもチームの所有物ではありません。イルモアが供給し、所有権はインディカーにあり、エンジンとまったく同じように封印されて抽選で割り当てられます。その代償は重さで支払われることになり、これについてはインディカーの重さを取り上げた記事で書きました。

1万マイルを4基のエンジンで
インディカーのエンジンには耐久性が求められます。シーズンを通してエントリーする各マシンには、4基の新品エンジンと、テストとレースを合わせて1万マイル、約1万6,000キロの走行枠が認められています。1基あたり平均2,500マイル、4,000キロ強です。ルールが認める数少ないケースを除き、メーカーが定めた走行距離に達する前にエンジンを交換すると、それが故障によるものであっても、グリッドで代償を払うことになります。1万マイルを走り切る前に5基目を積んだ場合も同じです。ロードコースとストリートコースでは6グリッド降格、オーバルでは9グリッド降格です。インディアナポリス500でそうなった場合、ペナルティは次のレースで適用されます。
このルールはメーカーにも重くのしかかります。インディカーはメーカーにもチャンピオンシップを設けており、早すぎるタイミングで積んだ5基目のエンジンはそのメーカーにポイントをもたらさないからです。さらにインディアナポリスでは、信頼性に専用の報酬があります。インディ500で使われたエンジンの累計走行距離が2,000マイルに達すると、そのマシンがレースで獲得したポイントと同じだけのボーナスがメーカーに与えられます。耐久性へのこだわりには長い歴史があるのです。
シボレーとホンダ、異なる2つの物語
2つのメーカーは、別々の道をたどってインディカーにやって来ました。ホンダは1994年から途切れることなくインディ系のシリーズに参戦しており、2002年まではCART、2003年からはインディカーで戦っています。エンジンはカリフォルニア州サンタクラリタで準備されており、その拠点は2024年からホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRC US)と呼ばれています。2006年から2011年まではシリーズ唯一のエンジンサプライヤーで、2007年からはエタノールで走るV8を供給していました。ホンダによれば、この6回のインディアナポリス500では、レース史上初めて、エンジントラブルでリタイアしたマシンが1台もありませんでした。シボレーは2012年に現在のV6で復帰しました。このエンジンは、1983年にイギリスで設立されたエンジニアリング会社イルモアと共同で設計・製造されたもので、イルモアはこのアメリカのメーカーとともに、1988年から1993年にかけてすでにインディアナポリスで6勝を挙げていました。
2012年にはメーカーが3社ありました。3番手のロータスはわずか1シーズンで撤退し、それ以来インディカーは2社による均衡の中にあり、その均衡が本物のライバル関係を生み出してきました。インディアナポリス500では、ホンダが17勝(最近では2025年と2026年)、シボレーが13勝を挙げています。インディアナポリス・モーター・スピードウェイの公式集計で、これを上回るエンジンはひとつしかありません。1935年から1976年までにインディアナポリスで27勝、1947年から1964年には18連勝を記録したオッフェンハウザーです。日本では、この物語には具体的な名前もあります。佐藤琢磨です。インディアナポリス500を制した初めての日本人ドライバーで、2017年、そして2020年に優勝し、2回ともホンダのエンジンを積んでいました。
2028年と2.4リッター
2026年2月12日、シボレーとホンダはシリーズと新たな複数年の契約を結びました。契約は2027年から始まります。これはマシンの世代交代に伴う合意で、2028年からインディカーはIR-28で戦います。新しいダラーラ製シャシーに、最大760馬力を発生する2.4リッターのツインターボV6を組み合わせ、約9キロ軽くなったハイブリッドシステムは、初めてスーパーキャパシタではなくバッテリーで駆動されます。
この合意には、エンジンメーカーの役割をよく表す新しい要素もあります。2028年から、両メーカーはそれぞれ1つの「チャーター」を保有できるようになります。チャーターとは、インディアナポリス500を除くシーズンのすべてのレースで、1台のマシンのグリッドを保証するライセンスです。シボレーとホンダは、もはや単なるサプライヤーではなくなり、グリッドの一部を手にすることができるのです。
メーカーが名前を掲げる理由
チームにとって、エンジンはコストの一項目です。RACERによれば、2025年のリース料はマシン1台・1シーズンあたり160万ドルで、チームオーナーが見積もる新品シャシーの価格を上回っています。これはインディカーにかかる費用を計算した記事で見たとおりです。しかし、メーカーにとっては事情が異なります。これはマーケティングへの投資であり、アメリカのモータースポーツの中でも最もわかりやすい投資のひとつです。メーカーの名前はエンジンにも、ランキングにも、さらには表彰台で上位3人がかぶる帽子にも表示されます。ルールでは、この帽子はファイアストンとシリーズの帽子のすぐ後にかぶることになっています。
インディカーをスポンサーシップのプラットフォームとして検討している企業にとって、2028年に誰が、どのような関与で参戦しているのかを知ることは、馬力の数字と同じくらい役に立つ情報です。パッケージ、コスト、機会についてはインディカーのスポンサーシップのガイドで整理しています。エンジンを含めたF1との比較は、インディカーとF1の記事をご覧ください。
最後に、多くを物語るひとつの事実があります。誰もが同じシャシーで戦い、積むエンジンの個体を誰も選べないシリーズで、最も激しいライバル関係のひとつが、ほかならぬ2つのエンジンの間にあるのです。おそらく、ほかのすべてがルールによって同じにされている場所では、そこだけが、あるメーカーがもう一方より優れていることを証明できる最後の場所だからでしょう。
インディカーのエンジンについてよくある質問
インディカーはどんなエンジンを使っていますか?
12,000回転のレブリミッターを備えた2.2リッターのツインターボV6で、2013年以降シリーズ唯一のサプライヤーであるシボレーとホンダが、それぞれのバージョンを製造しています。2024年7月からは、48ボルトのモータージェネレーターユニットとスーパーキャパシタからなるハイブリッドシステムが、エンジンとギアボックスの間に組み込まれています。
インディカーのエンジンは何馬力ですか?
コースによって異なります。ターボの過給圧はシリーズが定めるためで、ロードコース仕様ではV6は約700馬力、インディアナポリスのようなスーパースピードウェイではかなり低くなります。ハイブリッドが約60馬力、プッシュ・トゥ・パスがさらに約60馬力を加え、合わせると800馬力を超えます。
インディカーのエンジンはどこが作っていますか?
シボレーとホンダです。シボレーはイルモアと共同で設計・製造したV6で2012年にシリーズへ復帰しました。ホンダは1994年から途切れることなくインディ系のシリーズに参戦し、2003年からはインディカーで戦っており、カリフォルニア州サンタクラリタのホンダ・レーシング・コーポレーションUSAでエンジンを準備しています。チームはエンジンを購入せず、シーズン単位でリースします。エンジンが必要になるたびに、シリーズはメーカーが指定したプールから抽選で割り当てます。
インディカーのエンジンはどれくらいもちますか?
シーズンを通してエントリーする各マシンには、4基の新品エンジンと、テストとレースを合わせた1万マイル、約1万6,000キロの走行枠があります。1基あたり平均2,500マイルです。その距離を走り切る前に5基目を積んだり、ルールが認めるケース以外で早めにエンジンを交換したりすると、ロードコースとストリートコースでは6グリッド、オーバルでは9グリッドの降格ペナルティが科されます。
インディアナポリス500で最も多く勝っているエンジンは?
オッフェンハウザーで、1935年から1976年までに27勝を挙げ、そのうち18勝は1947年から1964年にかけての連勝です。現在のメーカーでは、ホンダが2025年と2026年の勝利を含めて17勝、シボレーが13勝です。
2028年からインディカーのエンジンはどう変わりますか?
新型マシンIR-28とともに、最大760馬力を発生する2.4リッターのツインターボV6が導入され、より軽く、初めてバッテリーで駆動されるハイブリッドシステムと組み合わされます。2026年2月、シボレーとホンダは2027年から始まる新たな複数年契約を結び、両メーカーはそれぞれ2028年から1つのチャーターを保有する権利を得ました。