スポンサーシップ・ホイール(sponsorship wheel)とは、スポーツ・スポンサーシップのプロジェクトを表すために私たちが使っている図です。三つの段階(意思決定、アクティベーション、効果測定)と、ブランドを囲むように円形に並んだ15の要素で構成されています。ホイール(車輪)の形をしているのは、スポンサーシップが成果の測定で終わらないからです。毎シーズン、より多くのデータと経験を手に、そこから再び始まります。
このサイトで何度もお伝えしてきたように、スポーツ・スポンサーシップは効果的であると同時に、立体的なマーケティング・ツールです。その強みは、複数のレベルで同時に働く点にあります。そのため多くの目標を同時に達成でき、デジタル・コミュニケーション、イベント、販売促進、マス広告といった、すでに進行中の取り組みを強化することもできます。
スポーツ・スポンサーシップを「複雑」と呼ぶのは誤りです(その仕組みに難しいところは何もなく、むしろ直接的だからこそこれほど効果的なのです)。ただし、何層にも重なり、多くのパーツからなり、最良の成果を出すにはそれらが一体となって機能しなければならない構造であることは確かです。業界の外にいる人にとって、これほど入り組んだ構造は時に近寄りがたく見えるかもしれません。
この「複雑さの神話」を解きほぐすのが、スポーツ・マーケティング会社やスポンサーシップ・エージェンシーの役目です。スポンサーシップの多様な側面にきちんと光を当てながら、理解することも乗り越えることもできない、頭がいくつもある怪物のように見せないことが大切です。
下の図は、見込み客や顧客に「next steps」の例としてよくお見せしているもので、スポンサーシップ・プロジェクトの流れを図にしたものです。プロジェクトを進めながら確認すべき項目のチェックリストとしてだけでなく、いま自分たちがどこにいて何をしているのかを常に示す、小さなロードマップとしても役立ちます。
スポーツ・スポンサーシップの三つの段階
この例では、スポンサーシップ・プロジェクトを三つの段階に分けています。
- スポンサーシップの意思決定(decision making)
- スポンサーシップのアクティベーション
- スポンサーシップの効果測定
意思決定は、プロセス全体の中で最も戦略的な部分です。ここで決断が下され、方向性が選ばれ、そして何よりも、プロジェクトの条件が企業の本質や特性、つまりよく引き合いに出されるミッション、ビジョン、パーパス、バリューと照らし合わされます。
一方、スポンサーシップのアクティベーションは最も戦術的な部分で、スポンサーシップの可能性を実際の施策に落とし込む段階です。最もクリエイティブで、間違いなく最もエキサイティングで、最も目に見える段階でもあります。コミュニケーション施策、イベント、ソーシャルメディア・マーケティングなどがここに含まれます。
最後に、スポンサーシップの効果測定は、プロセス全体の中で最も分析的な部分です。このツールの大きな効果がはっきりと見え、改善すべき点が見つかり、細かな調整の準備が整うのはこの段階です。

スポーツ・スポンサーシップのホイール
もう一つ明らかなのは、この図がその名のとおりホイール(車輪)だということです。出発点であるスタートはありますが、その力は繰り返しから生まれます。それどころか、回転を重ねるごとに良くなり、力強くなっていきます。
シンプルですが重要な考え方は、スポンサーシップは成果の測定で終わるのではなく、むしろそこから新たな力を得るということです。スポーツのシーズンが終わるたび、プロジェクトが完了するたびに、結果を分析し、より多くの材料とより細かな情報を持って戦略の段階に戻る機会にすべきです。
スポンサーシップの期間について書いた記事でも説明したとおり、少なくとも2シーズンは必要で、スポーツ・スポンサーシップが最大の効果を発揮するのは3〜4シーズン後です。脳の認知的な部分と感情的な部分の両方に働きかけるからです。それはまさにホイールの回転であり、この図が一回りするたびに、含まれるすべての要素が少しずつ良くなっていきます。
Sponsorship decision making:要素
- Objectives. いつものように、すべてのプロセスは、スポーツ・スポンサーシップで達成したいマーケティング目標を定めることから始まります。目標はSMARTでなければなりません。つまり、具体的で、測定可能で、達成可能で、現実的で、期限が明確であることです。
- Budgeting. 第二のステップは、スポンサーシップの運用予算を確保することです。予算には、スポンサーシップそのものの費用と、アクティベーションの費用の両方を含める必要があります。
- Sport / Property choice. この段階になって初めて、スポンサーになる競技、チーム、イベント、選手を選ぶことができます。直感による判断が優先されがちな重要な場面です。客観的かつ中立的な立場で動き、助言できる、有能でプロフェッショナルなエージェンシーの力を借りるほうがよいでしょう。
- Negotiation. スポーツの権利保有者(プロパティ)やエージェンシーと一緒に、完璧なオーダーメイドのプランを作る段階です。目的は、余計なものをすべてそぎ落とし、目標に合った、明確で無駄のない権利パッケージを残すことです。スポンサーシップに標準パッケージはありません。すべては何を達成したいかに応じて、オーダーメイドで作られます。
- Legal reviews & signing. 意思決定の最後のステップは、非常に重要な法務レビューと契約の締結です(もちろん、複数年契約で、すでにホイールの2周目や3周目に入っている場合は別です)。法務レビューは、自社を守り、プレーするフィールドの広さを把握するためだけでなく、話し合ったすべての点を詳細まで文書に残し、現在はもちろん、とりわけ将来に問題を抱えないためにも欠かせません。
Sponsorship activation:要素
- Release notes & announcements. 新しいパートナーシップの場合、スポンサーシップの発表は非常に重要な瞬間です。発表はスポーツ・プロパティと連携して行うべきで、イベントや専用のメディア向けの場で行えばなおよいでしょう。オフシーズン明けでメディアもファンも新しいニュースを待っているため、年の初めはいつも発表に適した時期です。
- Marketing & graphic materials ready. アクティベーションの第二のステップは、マーケティング施策に必要な、ビジュアルとそれ以外のすべてのコミュニケーション素材を準備することです。バナーから店頭販促物、動画広告からソーシャルメディア用のグラフィックまで、スポンサーシップが形と色と中身を持ち始めるのはここからです。
- Content & social media planning. レース、イベント、スポーツや企業の重要なタイミングを考慮した編集計画は、ソーシャルメディアで、そして日常のコミュニケーションでも、成功する一年を送るために欠かせません。コミュニケーションを計画しておけば、行き当たりばったりにならず、最も緊迫した場面で即興対応に追われることもありません。
- Activities and events scheduling. 同じくアクティベーションの中で、スポンサーシップの権利を活用するイベント、展示会、コンベンション、社内行事をスケジュールに組み込むことが重要です。ショーカーやショーバイクの活用、ライダー、ドライバー、経営陣の出演、ホスピタリティ、ライセンス契約(ほんの一例です)は、最大の効果と適切な運営を実現するために、前もって計画しておく必要があります。
- Last minute & low hanging fruit. スポーツは予測不能で、一年の間には直前に訪れるチャンスや、すぐに手にできる成果がたくさんあります。予想外の逆転勝利、思いがけない受賞、記憶に残る日曜日など、これらはほんの一例です。準備を整え、フィールドやコースで起きていることを注意深く追い、どんな事態にも対応できる素材を用意しておくことは絶対に必要です。
Sponsorship measurement:要素
- Reports & meetings. チーム、イベント、そしてスポーツ・プロパティ全般は、スポンサーシップの進捗について定期的にレポートを送り、状況を報告して振り返るためのミーティングを開きます。これはスポンサーにとって通常最初の、そして重要な意見交換の機会です。こうしたミーティングを実りあるものにし、遠慮なく質問することが大切です。また、届いたレポートを丁寧に読み、保管しておくことも重要です。
- Digital & social reporting. ウェブサイトのアクセス解析やソーシャルメディアの統計からは、コミュニケーション施策の進み具合について興味深いヒントが得られることがよくあります。スポーツ・スポンサーシップはソーシャルメディアでオーディエンスを巻き込むのに特に効果的で、スポーツがストーリーの一部になった瞬間に関心が大きく高まることも珍しくありません。
- AVE & TV audience. 広告換算値(Advertising Value Equivalent)とテレビ視聴者の分析は、しばしばセットで使われます。AVEは「スポンサーシップで得たのと同じ露出を広告で得るには、いくら払う必要があったのか」という重要な問いに答えるものです。F1やMotoGPのような大規模なシリーズでは、テレビの視聴者数とそこから得られるデータは、数の面でも地理的な広がりの面でも圧倒的です。ただし、AVEだけでは不十分です。AMECが2020年に発表した「Barcelona Principles 3.0」(バルセロナ原則3.0)は、広告換算値はコミュニケーションの価値を測るものではないと指摘しています。だからこそ私たちは、AVEを唯一の指標としてではなく、いくつかある指標の一つとして使っています。
- Customer satisfaction questionnaires. 一対一の施策、マス広告以外のコミュニケーション、販売促進などでは、アンケートや満足度調査が、実施した施策の評価を正しくつかむために重要になることがよくあります。ホスピタリティ、展示会、イベントは従来の統計とは異なるデータをもたらしますが、だからといって測定できないわけではありません。
- Sales reports. 最後に、非常に重要なデータは、スポンサーシップ実施後、あるいは少なくとも開始からしばらくたった後の売上分析から得られます。収益への影響は、出自、規模、業種を問わず、どの企業にとっても極めて重要です。考慮すべき唯一のデータではありませんが、物事がうまく進んでいるかを示す重要な指標であることに変わりはありません。
使い方
あらゆる図と同じように、この「スポンサーシップ・ホイール」も単純化したものです。多くの要素を加えることも、減らすこともできます。同じスポンサーシップが二つとない以上、同じケースも二つとないからです。この試みの目的は、このツールの循環的な性質と、あらゆるプロジェクトを構成する多くの段階や要素を示すことにあります。もし一歩ずつ順番に進む直線的なプロセスをお探しなら、スポーツ・スポンサーシップのプロセスの8つの段階についての記事をご覧ください。
どのスポーツ・スポンサーシップ・エージェンシーも、このプロセスを個別に合わせることが成功するスポンサーシップへの第一歩だと知っています。このホイールを、F1、MotoGP、その他のトップクラスのモータースポーツ・シリーズでの皆さまのスポンサーシップ・プロジェクトにどう活かせるかを知りたい方は、info@rtrsports.com までご連絡いただくか、このサイトのお問い合わせフォームをご利用ください。
スポンサーシップ・ホイールに関するよくある質問
スポンサーシップ・ホイールとは何ですか?
RTR Sportsがスポーツ・スポンサーシップのプロジェクトを表すために使っている図です。15の要素を三つの段階(意思決定、アクティベーション、効果測定)に分け、ブランドを囲むように円形に並べています。毎シーズン、前のシーズンの成果から再び始まるからです。
スポーツ・スポンサーシップの三つの段階とは何ですか?
目標、予算、プロパティを決める戦略的な部分である意思決定、スポンサーシップをコミュニケーション、イベント、コンテンツに変える戦術的な部分であるアクティベーション、そして成果を評価する分析的な部分である効果測定です。
なぜスポンサーシップはホイールとして表されるのですか?
効果測定で終わらないからです。各シーズンの成果は戦略の段階に戻り、次の一回りをより良くします。少なくとも2シーズンは必要で、スポンサーシップが最も効果を発揮するのは3〜4シーズン後です。
スポンサーシップ・プロジェクトはどこから始まりますか?
マーケティング目標からです。目標はSMART、つまり具体的で、測定可能で、達成可能で、現実的で、期限が明確でなければなりません。予算や競技、プロパティの選択はその後です。
スポンサーシップの予算にはアクティベーションも含まれますか?
はい。運用予算には、スポンサーシップの費用と、それを活用するための費用、つまり素材、コンテンツ、イベント、ホスピタリティの両方を含める必要があります。アクティベーションのないスポンサーシップは、本来得られる成果よりはるかに少ない成果しか生みません。
スポーツ・スポンサーシップはどのように測定しますか?
複数の指標を組み合わせて測定します。プロパティとのレポートやミーティング、デジタルとソーシャルメディアのデータ、AVEとテレビ視聴者、満足度調査、売上分析です。AVEだけでは不十分で、AMECの「Barcelona Principles 3.0」によれば、AVEはコミュニケーションの価値を測るものではありません。